米大統領選の結果が出た日、日本ではこんな報道があったようですね。
とんでもない誤訳だとソーシャルメディアで叩かれ、あっという間にウェブサイトから削除されています。
Love trumps hate は単純なSVO文型で、Loveが主語、trumpsは三単現の動詞、hateが目的語。ソーシャルメディアでも散々指摘されている通り、普通に翻訳すれば「愛は憎悪に打ち勝つ」となります。

ただし、これを普通に訳して「trumpsはただの動詞でトランプの話なんかしてないよ」と言うのも実は間違いで、これが民主党陣営が使っていたキャンペーンスローガンのひとつであることを忘れてはいけません。単に「愛は憎悪に打ち勝つ」と言いたいなら他にも動詞の選択肢はいくつかあります。
にもかかわらずtrumpsという表現を選んでいるのは、ライバル候補の名前がTrumpだから。
そしてそのトランプ候補が口を開けばヘイトスピーチがあふれるような人物だから。
Love trumps hateは、トランプ(Trump)という人物が代表するヘイト思想に打ち勝つ(trump)のは愛だ、というメッセージなんですね。
「トランプのヘイトに愛が勝つ」くらいの訳が適切なのではないかと思います。
Love trumps hateは、ぶっちゃけて言えば駄洒落です。英語ではpunまたはplay on wordsと言います。
そういえば民主党の候補選ではサンダース候補の支持者がFeel the Bernというスローガンを使っていましたが、あれもFeel the burnという一般表現をもじった駄洒落でした。
日本語ではオヤジギャグのイメージが強くて敬遠されがちの駄洒落ですが、英語では上手に使えば切れ味のあるウィットとして評価されるので、スローガンやニュースの見出しなどでもよく使われるし、スピーチ等で使われることも多くて通訳者泣かせです。やりすぎると寒い印象になるのは日本語と同じですが…。
おまけ:
#MakeDonaldDrumpfAgain
いかにも勝ち組っぽくて強そうなトランプという名前も、家系を辿ると実は途中で改名した結果だ、という話でした。