※ 先日ツイートして反響の大きかった情報を、追加情報も交えてここにまとめておくことにしました。
日本在住の翻訳者は取引先も日本の翻訳会社が多いと思いますが、情報をインターネット上に乗せていると、海外から引き合いが飛び込んでくることもあるかと思います。また、私も含め日本以外の国に居住している翻訳者の場合、かなり頻繁に知らない会社から引き合いが来ることがあります。
そういう時気になるのが、「この会社、取引先として大丈夫なのか?」という点。そこで、私が取引のない翻訳会社からコンタクトを受けた時にしているチェック方法を紹介します。
1. Translator Scammers Directory (http://www.translator-scammers.com/)
最初にチェックするのがこのサイト。日本ではあまり聞きませんが、海外では翻訳者履歴書盗用詐欺が増えていて、翻訳会社、個人翻訳者両方で被害が増え、問題になっています。詐欺の仕組みについては、こちらのフローチャートを参照してください。
The Translator Scammer explained! It’s all here: http://t.co/NNRcSR2dsq #xl8scam pic.twitter.com/XY6kDzF9Ft
— Translator Scammers (@tsdirectory) November 20, 2014
Translator Scammers Directoryには、この詐欺に関わっていることが判明しているエセ翻訳会社の名前やメールアドレス、過去の詐欺の手口などがリストアップされていますので、知らない会社から引き合いが来たら、まずはこのリストを検索することをお勧めします。会社名やメールアドレスがここに載っていたら、そのアドレスは迷惑メール登録しておきましょう。
2. Translation Agencies Blacklist (http://translationethics.blogspot.se/p/blog-page.html)
Translation Ethicsというサイト内にあり、サイト運営者の体験や他の翻訳者から寄せられた情報にもとづいてまとめられたリストです。極端に低い料金を提示する、料金を滞納する、納品物に難癖をつけて料金支払いを拒否するといった問題があったブラックな翻訳会社が掲載されており、前述のTranslator Scammersには載っていない会社がこちらに登場するケースもあるため、両方チェックするようにしています。
3. Proz Blueboard (http://www.proz.com/blueboard/)
Prozは世界最大の翻訳者登録サイトとして知名度が高い一方で、翻訳買い叩きを促進させる逆オークションサイトという悪名も高いサイトですが、その中に、会員が取引先翻訳会社を評価するBlueboardというセクションがあります。詳細コメントを閲覧できるのは有料会員だけですが、評価エントリーのうち5段階評価の数字だけは、有料会員でなくても見ることができます。また、メンバーから苦情が集まったために出入り禁止処分になった会社についてはページトップにこのような注意書きが掲載されます。
ただし、実際の評判はあまり芳しくないのになぜかBlueboardでは5が並んでいる、ヤラセ書き込み疑惑のある会社もありますので、評価はそのまま鵜呑みにはしない方がよさそうです。
4. Company Check (http://companycheck.co.uk/)
私の場合、英国に在住し英国翻訳通訳協会(ITI)に所属している関係上、英国の会社から飛び込みの引き合いが入ることがよくあります。その場合は、上記3箇所のチェックに加えてここでも検索をかけています。英国では会社登記情報をCompanies Houseという官庁で管理しているのですが、そこに登録されている会社情報を確認できるサイトです。英国の翻訳会社のはずなのにここを検索しても出てこないなら、会社の存在自体が偽りであるということになります。また、無料で確認できる情報は限定されているのですが、それでも財務情報のまとめが確認できるので、数字を見てここは経営が危なそうだといった判断ができます。会社登録事務所所在地や取締役名も掲載されていますが、この情報を追うことで過去に倒産している会社との関係がわかることもあります。
5. 翻訳者仲間情報
上記のチェックすべてをクリアした会社については、実際に受け取ったメールの内容を見て判断していますが、判断つきかねる場合にはやはり他の翻訳者に情報を求めるのが最善策だと思います。私の場合はITIの日本語専門部会であるJ-Netのメーリングリストで、「こんな会社から引き合いが来ているんだけど、取引したことのある方、コメントください」という質問をしています。また、FacebookやLinkedInのプロ翻訳者グループで確認するという手もあります。
おまけ: 返事をする際のアプローチ
ここまでしっかりチェックして大丈夫そうならいよいよ返事を書く段階に入りますが、ここで最近私が心がけるようにしているのが、個人情報を送ったりトライアルを受けたりする前に、まずこちらから料金を提示すること。具体的な単価を書いて、「この単価で了承いただけるようならご連絡ください。折り返し履歴書を送付します」という内容のメールを送ります。この時点でコンタクトが途絶える会社、かなり多いです。
以前は「自分の希望単価は高すぎるのだろうか」と不安になって、引き下げ交渉に応じたり自発的に低めの数字を出したりすることもあったのですが、なぜかそういうところとは結局取引が続かなかったので、それならわざわざ下げる必要もないかと最近は割り切っています。