プロにタダ働きしてもらうという発想

昨日と今日、立て続けにSNS経由でこんな話を見かけたので、こちらに書いておくことにしました。

まず昨日、ウェブデザイナーの方から回ってきたリンク。
http://bit.ly/Tennoji
デザインの力で、行政を変える!!~天王寺区広報デザイナーを募集します~

読んでいくと

1.業務内容

以下の項目のいずれか、または両方も可。
・天王寺区役所が実施する事業のポスター・チラシのデザイン案作成
・天王寺区役所が作成するポスター・チラシ・ホームページレイアウトに対してのデザイン面でのアドバイス
※ デザイン案の作成・アドバイスについては、区役所での打合せのほか、電子メール・電話・ファックスによるやり取りでも可能です。

[中略]

4.応募条件

・デザインにかかる実務経験をお持ちの方
・デザインにかかる業務を行っている法人(デザイン学校等も含む)
・美術学校または専門学校等でデザインについての知識を学んでいる学生
※市内在住、または市内に事業所があるといった所在地での制限はありません。応募・実際の業務とも電子メールでのやり取りが可能ですので、区役所にお越しいただく必要もなく、全国どこからでも応募可能です。

5.報酬

なし

ちょww

当然プロのデザイナーの方々に激しく突っ込まれたようで、今日見たら内容が変更されていました。

(変更前)

大阪市天王寺区役所では、「デザインの力で、行政を変える!!」をキーワードに、「天王寺区広報デザイナー」を募集します。

(変更後)

大阪市天王寺区役所では、「天王寺区デザインパートナー」として、広報活動にボランティアでご協力いただける方を募集します。

応募条件も、プロを探すのはさすがにあきらめて、勉強中の学生さん対象に絞ることにしたようです。

 

苦笑していたら、今日はTwitterの翻訳クラスタからこんなリンクが回ってきました。

http://bit.ly/komachi-q
好きな人が翻訳を断ってきました

時折釣りとしか思えないとんでもない質問が飛び出して楽しませてくれる発言小町ですが、

相談に乗って下さい。好きな人が通訳翻訳です。同じ会社にいました。毎日翻訳してくれてました。その人は会社辞めました。好きだったし、SNSでつながって貰いました。以降、ちょくちょく英語のサイト(仕事以外)で知りたい内容をSNSのメッセ経由で翻訳お願いしてました。

何度も助けてくれていたのに、ある時、「ご依頼は翻訳会社を経由して下さい」と言われました。(翻訳会社はとても高いので到底無理です。)それだけでもショックなのに、その後その人の母が病気になり、普通にメールしても返事こなくなりました。雑談メールは返信貰えないから、仕事として翻訳をお願いするメールを送ったのですが、今回はボランティアでお願いします、と海外から輸入したエクササイズマシンの使い方をお願いしました。ほんの10ページくらいの薄い説明書です。その人は、親が病気だからそういう余裕がないと断ってきました。ほんの少しの量だし、それをやればその人の仕事の幅も広まるし(翻訳通訳は経験分野を広めておく必要あると前にその人言ってました)、あなたにとっても勉強になるし、メリットあるからやってみて、と下手に出て丁寧にお願いしたら、「以降、翻訳は一切受けません。メールも控えさせて頂きます」と言ってきました。ビックリして、その人を失いたくないから「翻訳を頼んだのは、仲良くなりたかったからです」と告白っぽいことを思い切って言ったのに、その後返信なし。電話したいけど番号しりません。個人メールも知らず、SNSのメッセージしかつながっていませんので、誤解がはらせません。

そして回答者からの「図々しい、非常識すぎる」の声の嵐に応えてトピ主が書いた追加情報。

今まではその人は10回くらい会社辞めてからも無料で翻訳してくれていました。
友達(とはいえないけど、友達未満のような恋人未満な感じです)のような関係だったので、まさかお金を取るという発想が相手にあるとは予想もせず、ちょっとお金にはクリーンではない人なのかな、とモヤモヤしている部分はあります。
前に旅行先で買ったファッション雑誌を訳して欲しい、とお願いしたところ、「これは翻訳会社を経由して正式ルートで頼まれたら何十万円かするので、ちょっと受けかねます」と却下されました。
内容は軽い感じなので、意味が分かる程度でいいし、出来る時に練習を兼ねて訳してくれればそれでいい、と言ったのに無理無理、の一点張りでした。(職人気質で頑固なところがあります。)

その人いわく、翻訳を頼むとき、大体1ページ日→英なら3000円くらい、英→日なら2,000円くらいは普通に貰っていると言うのです。本当にそんなにかかるものなのでしょうか?10ページやったら2~3万円貰えるってことになりますし、不自然です。

本当なら知り合いにお金ちょうだい、と暗に言うのはマナー違反と伝えたいのですが、言えるような雰囲気でもなく・・・悲

本当に釣りじゃないのかなあ、すごいなあ。天王寺区の方はまだ「無報酬だけど名前出しや広報での紹介があるので宣伝効果が期待できる」という条件だったけど、「知り合いにお金ちょうだい、はマナー違反」という発想は凄すぎる。まあ、回答の方は圧倒的に「翻訳で生計を立ててるプロに『無料で翻訳してよ、勉強になるでしょ』なんて非常識な依頼を何度もしたら嫌われて当たり前」という内容なので、救いはあるかな、と。

 

でも意外とあるんですよ、翻訳者と聞いて「これちょっと訳してくれない?」と言ってくる人。なので常識ですが念のため書いておきます。

  • フリーランスで働くプロは月給もらえません。仕事の報酬が収入の全てです。無料の仕事をするには、報酬のある仕事に使うべき時間を犠牲にしなくてはならないので、その時間分の収入が減ります。「時間=お金」です。

 

  • 翻訳作業はけっこう時間がかかります。機械翻訳が一瞬で訳文を出力できるのは、文章を翻訳しているわけではなくデータベースの自動検索結果を表示しているだけだからです。10ページの取扱説明書だと、テキスト量や内容がわからないので正確なことは言えませんが、丸一日かかってもおかしくない量です。内容によってはもっとかかる可能性もあります。
    [追記] トピ主の追加コメントによるとテキスト量は3870ワードだそう。いやこれ、掛かりきり作業でも丸2日必要な量ですよ(-_-;) 

 

  • 「1ページ日→英なら3000円くらい、英→日なら2,000円くらい」というのは、翻訳会社経由でもらう仕事の料金としては普通レベルです。人によっては「これじゃ低すぎる」という翻訳者も多いと思います。
    [追記] 「1ページ日→英なら3000円は普通」と書きましたが、翻訳単価で「ページ」と言った場合、これは英単語200ワードで1枚と計算します。この取説は10ページといっても各ページのテキスト量はこのページ単価の倍近いですから、2~3万円で済んだら不自然どころか激安価格の出血サービスレベルですねー。

もちろん翻訳に限った話ではなく、デザイナーを始めフリーの仕事すべてに当てはまることですね。

プロにタダ働きしてもらうという発想” への2件のフィードバック

  1. こんにちは。
    私も翻訳をタダで依頼されることが度重なり、精神的に負担になって悩んで、このページにたどり着きました。
    私はプロの翻訳家ではなく、文学を学ぶ大学院生ですが、内容を読んでいて私の心のわだかまりはおかしなものではないのだと感じることができて、少し救われた気分になれました。
    私は先生が翻訳してと言ってくるのを未だことわれず悶々としています。。

  2. 似た経験があります。
    最初くらいは無料でいいかと思って80ページほどの専門書の翻訳をしました。
    宣伝目的もありました。
    その後、有料で仕事を頼んでくれる人、必要な人を紹介してくれる人、いろんな面で助けてくれる人などいろんな人が現われました。
    ただ、最初に頼んできた人からは、英語も無料の仕事、SEも無料の仕事、経理も無料の仕事などととんでもないことを言われてものすごく苦しみました。

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