日本会議通訳者協会(JACI)の年次CPDイベント日本通訳フォーラムが、今年は日本通訳翻訳フォーラムと名を変え、完全遠隔イベントとして開催されました。
私は通訳はやらないのでJACIのイベントに参加したことはなかったのですが、例年「日本通訳フォーラム」として開催されているCPDイベントがオンラインで決行され、しかも通訳だけではなく翻訳のセッションも充実、さらに全て録画されるため時差の問題もないというのです。仕事も減って時間がある今、これは良い機会だと早速申し込みました。
その時は「8月1日から31日の1ヶ月にわたり30以上のセッションを企画」との話だったのですが、蓋を開けてみると50セッションを超える空前の規模でその半数は翻訳関連と、盛りだくさんのイベントでした。チケットは1000枚を完売したそうで、IJET-31や翻訳フォーラムのシンポジウムなど大規模な翻訳イベントがキャンセルされていたせいか、翻訳者が参加総数の7割ほどを占めたとのことでした。
さまざまな分野の翻訳・通訳に関するセッションのほか、時節柄コロナ関連の話題を取り上げるセッションもあり、興味深く聞きました。対面の大規模CPDイベントと違って複数のセッションが同時進行することがないので、通常なら無視する通訳者向けセッションや畑違いの分野のセッションも好奇心の赴くままに参加できました。もうひとつウェビナーの良いところは、ネットに接続できる場所ならどこでも視聴できること。我が家にはトレッドミルがあるのですが、そのコントロールパネルにノートパソコンをくくりつけて歩きながら見ることにしました。1セッションで7千歩を超えるので良い運動になるし、眠くならないのも利点です。
セッションの中にひとつ、無料で一般公開されたものがありました。翻訳フォーラム(http://fhonyaku.jp/)主催者4人によるパネルディスカッションで、「翻訳者のなり方・続け方」という、初心者に焦点を当てたテーマ。昨年秋のBulletinに掲載した「在宅翻訳起業講座」問題が今も続いており、コロナ禍による収入減の不安を抱える人を狙った広告で大々的に宣伝活動をしているため、その対策という意味もあって直前に無料公開に踏み切ったようです。その結果500人以上がライブセッションを視聴し、2時間の枠ではQ&Aが収まらず時間を延長する盛況ぶりとなりました。主に駆け出し翻訳者や学習者を対象にしていたとはいえ、私にとってもコロナ禍の難しい状況の中でどう舵を切るか、参考になるセッションでした。
ネットワーキングセッションも2つ設けられ、そのひとつにはライブ参加したのですが、参加者が多かったこともあってやはり対面イベントのように気軽におしゃべりしながらつながるというわけにはいかず、不満が残りました。やはりCPDイベントの目玉はネットワーキングで、これはコロナ後を楽しみに待つしかないようです。とはいえ、コロナ禍でイベントが軒並みキャンセルされる中、逆にこんな時だからと過去最大のイベントを企画・実行したJACIの心意気には頭がさがる思いです。