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J-Netは英国翻訳通訳協会(ITI)の日本語スペシャリスト・ネットワークです。現在J-Netには約160人ほどが所属していますが、その内訳はITI正会員、アソシエイト会員の他、「フレンド」と呼ばれるITI非所属の翻訳・通訳者から成り、メンバーの半数ほどがこのフレンドです。ふだんのJ-Netの活動はメーリングリストが中心で、難解な専門用語の訳語からお勧め日本食レストランまで気軽に質問できる話し合いの場になっています。また、年に2回はワークショップを開催しており、プロとしてのスキルを磨くと同時に、メーリングリスト上の知り合いとオフラインで会い、交流を深めることができます。
1月のワークショップは例年私にとってサルサ年間スケジュールのハイライトのひとつであるスコティッシュコングレスとぶつかってしまうことが多いのですが、今年はコングレスの翌週という理想的な日程で、2013年最初の英国一時帰国はダンスと勉強を兼ねた充実スケジュールとなりました。前日のロンドンはかなりの雪でイベントへの影響が心配されましたが、土曜日は快晴の天気で積もっていた雪もほとんど残らず、おかげで蓋を開けてみると30人を超える参加がありました。
ワークショップの幕開けは、J-NetベテランでITIフェロー会員のベン・ジョーンズさんによるビジネス・スキルのセッション。まずは「いわゆるエレベーター・ピッチ(エレベーターで乗り合わせた投資家に対し、目的階に着くまでの30秒以内に自分のビジネスを売り込むという、起業家の必須スキル)をやらなければならない状況になった時、自分のことをどう説明しますか?」 という質問から始まりました。「翻訳者」というのがもちろんまず頭に浮かぶわけですが、社内翻訳者ではない翻訳者は、フリーランス・会社オーナーの別はあれ立派なビジネスパーソン、つまり事業主です。というわけで、グループに分かれて翻訳ビジネスのSWOT分析をする、というタスクが課されました。事業の弱みと強み、機会と脅威の4点を検討するという分析ですが、私のグループでは最初の2点を考えるだけで時間切れとなってしまい、また強みと機会、弱みと脅威の区別にも一苦労。でも後日このブログであらためて分析してみようかなと思っています。
次に、付加価値税納税者登録や法人化の是非について、クライアントの提示する取引条件に不公平な条項がある場合どうすれば良いか、クライアントからの支払いが滞っている時に支払いを求める方法等、ビジネスを経営する上で避けて通れないポイントについて実例を引きながら話があり、またゲストとして招かれていたITIの法律専門家からも的確なアドバイスが得られました。国が違うと法制度も異なるので、すべてそのままオランダに当てはまるわけではないのですが、それでも参考になる話がいろいろありました。最後に「もうひとつ大事なのがクライアントの啓蒙」ということで、クライアントへの配布用に全員に 「翻訳で失敗しないために〜翻訳発注の手引き」が配られ、午前の部終了となりました。
お昼はちょっと歩いたところにあるメキシカンでボリュームたっぷりの2コースランチ。すっかり時間がかかってしまい、午後の部は遅れての開始となりました。今度は辞書翻訳の経験豊かなグリーン裕美さんによる新語・流行語セッションです。数年前のワークショップで好評だったこのセッション、今回は2011〜12年の日本・英国の新語・流行語を対象にリピートとなりました。今回は英語ネイティブ2人、日本語ネイティブ1人の3人グループに分かれての作業。私はグループ内で日本語クイズでの戦力として期待されていたわけですが、流行語とその発言者をマッチするするというクイズで残念ながら正解率は半分程度。特に政治関係と芸能関係に苦戦し(ドジョウ内閣って何?ラブ注入って誰のギャグ?)、日頃のメディアチェックの偏りがはっきりする結果になりました(汗)。正直英語クイズの方が簡単だった…(大汗)。今回もみんなで大笑いしながらのセッションは、もともと少なかった割当て時間がのんびりランチの影響でさらに減ってしまったのが残念な賑わいぶりでした。
午後の部後半はJ-Netの年次総会に当てられ、その後みんなで夜の部、新年会の会場へ移動しました。翻訳者のほとんどは在宅で働くフリーランスなので、日常的に人と会う機会が少なく、特に同業者と話ができるチャンスはまれ。というわけで、ワークショップといえばみんながいちばん楽しみにしているのがこの夜の交流会です。今回は雪による交通の心配があって新年会参加を当日キャンセルする人も多く、昼間に比べてずいぶん数は減ってしまったのですが、夜のみ参加という人もいて、ベテランメンバーから初参加者まで幅広い顔ぶれが集まりました。今回の会場はソーホー・ジャパンという日本食店だったのですが、実はこの夜がソーホーでの営業最終日で、シティ地区移動するのだと聞かされました。新店舗の最寄り駅は地下鉄バンク駅だそうですが、名前はソーホー・ジャパンのままキーブするのだそう。バンク・ジャパンでもいいんじゃないかと思うんですけど、ダメかなあ。ドタキャンが多かったこともあって、用意されたビュッフェはとても食べきれない量。ドリンクメニューに載っていない梅酒まで誰かのリクエストに応えて蔵出しされ、これがなかなか美味しくて好評でした。飲み食いしながら仕事の話、欠席J-Netメンバーの消息から新しい飼い犬の話までしゃべっているうちにあっという間に夜が更け、最後は残った食べ物の折り詰めを持たされてお開きとなりました。
J-Netでは毎年2回ワークショップを開催しており、次回のイベントは6月、ミッドランド地方で開催される予定です(日時・会場は未定)。また、年次総会ではワークショップの他にもネットワーキングイベントなどもっといろいろ集まりを企画しようという話もありました。英国在住または英国とのリンクのある翻訳者(や翻訳者の卵)でJ-Netへの参加に興味のある方は、membership@j-net.org.ukまでお問い合わせください。
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