オックスフォード辞典、2016年を代表する言葉はPost-truth

日本では、毎年年末が近づくとその年の新語・流行語大賞が発表されて話題になりますが、英語圏でも権威ある英語辞書オックスフォード辞典が、その年を代表する新語・流行語Word of the Yearを発表します。

2015年にはうれし泣きの顔文字(Unicode: U+1F602、😂 )がWord of the Yearとなり、オックスフォード辞典史上初めて言葉ではなく絵文字が選ばれたことが、ソーシャルメディア普及の象徴として話題になりました。

しかし、去年のほほえましさとは打って変わって、今年のWord of the Yearとして11月17日に発表されたのは…

Post-truthという言葉、確かにニュース解説でもソーシャルメディアでもよく目にしました。Postは「後」を意味する接頭辞、truthは「真実」。直訳すると「真実後」となりますが、意味するところは「真実が意味を持つ時代が終わった後」。「今や真実かどうかなんて事はどうでもよい時代になってしまった」ということです。

英国でこの言葉が使われた対象は、6月のEU離脱国民投票の結果。離脱派メディアや政治家は、EUに払っている拠出金額の大きさを誇張宣伝(助成金として戻ってくる額の大きさについては沈黙)し、「このお金を取り戻して国民医療サービスを救おう」というキャンペーンを展開。またEU、特に東欧諸国からの移民が英国社会を崩壊させている、その上もうすぐトルコがEUに加盟すると訴えて世論を動かし、まさかの勝利を勝ち取って世界を驚愕させました。

特にPost-truth時代の到来を象徴したのは、経済や金融の専門家がデータや知見を駆使してEU離脱による損害の大きさを訴えたことに対して、離脱派ゴーヴ司法大臣が放ったこの言葉。

“People in this country have had enough of experts”
(国民はもう専門家には飽き飽きしている)

 

一方アメリカでは、Post-truth時代の象徴はもちろん大統領選。立候補した当初はジョーク候補扱いされていたドナルド・トランプが、あれよあれよという間に人気を集めて共和党の指名を勝ち取り、ヒラリー・クリントンとの一騎打ちの末に勝利を獲得してしまう大番狂わせとなりました。選挙戦中は両候補の発言の真偽を確認するファクトチェックが盛んに行われ、トランプの嘘つきぶりが暴露されたにもかかわらず、選挙結果を左右することはありませんでした。

オックスフォード辞典のWord of the Yearが発表されたのがトランプ勝利の翌週だったのは、偶然ではありません。

※”Pants on fire”というのは「真っ赤な嘘」のこと。子供が嘘つきを責める時に”Liar, liar, pants on fire”と囃し立てることからきています。

 

最後に、オックスフォード辞典の選択に対するコメントツイートをひとつ紹介して締めたいと思います。