スコットランド議会選挙、多様性が勝利

2021年5月6日(木)はスコットランド議会選挙でした。

今回の選挙はスコットランド独立問題で国際的にも注目されていたようで、日本のメディアでも報道されていましたが、私が特に注目していたのは当選議員の男女比です。

5年前に行われた前回の選挙では、このブログでも書いた通り、政治のジェンダー平等を目指すWomen 50:50キャンペーンに賛同した各党が女性比率向上に取り組んだにも関わらず、まったく数字が動かないという残念な結果に終わりました。そのため、今回は前回から学んだ教訓がどれだけ生かされるかが焦点でした。

さて、結果はどうだったかというと、前回の35%から今回は45%に大きく前進。129議員のうち58人が女性と、もう少しで50:50に迫る数字に近づきました。

各党の取り組みを紹介します。

まず、今回議席のほぼ半数を獲得して圧勝した与党SNP(スコットランド国民党)では、今回の選挙を機に多くのベテラン議員が引退しました。そこで、引退議員の小選挙区議席を引き継ぐ新人候補の人選で、できるだけ女性を立てるという方針を採りました。これが功を奏して、当選議員の女性比は53%(64人中34人)に。

選挙でのクオータ制採用の歴史が長い労働党は、いつもと同様比例代表リストのジッパー制を採用。8つのリストすべてで男女を交互に並べ、うち4リストではトップ候補を女性にするという定番の手法です。今回は議席を減らしてしまったこともあり50%に届きませんでしたが、それでも45%(22人中10人)と安定のバランスの良さを見せました。

でも今回最も改善が大きかったのは緑の党です。このブログでも紹介した通り、前回は労働党と同様の完全ジッパー制を採用したにも関わらず、少数政党のハンデで当選者ゼロのリストが複数あり、トップ候補の女性が落選してしまうという憂き目にあいました。今回はこの問題を回避するため、現職議員以外は全てのリストで女性をトップにし、女性を複数トップに並べるといった工夫もして臨みました。その結果、今回は議席を増やしたおかげもあって当選8人のうち5人は女性に。63%という高い女性比を達成しました。

今回改善されたのは男女比だけではありません。非白人議員は、前回まで男性2人だけでしたが今回は6人と3倍増。しかもうち2人は女性です。相変わらず男女比改善にはまったく協力しなかった保守党も、女性比は26%(31人中8人)と低いものの、初の非白人女性議員を当選させて多様性向上に貢献しました。

障害者議員も増え、今回は初めて車椅子ユーザー議員が誕生しました。

しかし、まったく問題がないわけではありません。今回の選挙では、若手女性議員が子育てとの両立が難しいとの理由で再選をあきらめ、政界から退いています。当選はしなかったものの、選挙活動イベントでトランスジェンダーヘイトを公言する候補者もいました。開票所ではネオナチ活動家が非白人議員にからみ、ナチス式敬礼をするといった場面もありました。さらに、見事当選した車椅子ユーザー候補が開票会場で舞台にアクセスできないという問題もありました。どれも今後5年間の課題です。

でも、「スコットランド国民の構成を反映するようになってきた」とメディアでも報じられたこの新議会が、これからの5年間で多様性を政治・社会に反映させていくよう、期待したいと思います。

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