2016年5月5日(木)はスコットランド議会選挙でした。
2014年9月のスコットランド独立投票の後辞任したアレックス・サーモンド(Alex Salmond)に代わってスコットランド国民党(SNP: Scottish National Party)党首・スコットランド首相に就任したニコラ・スタージョン(Nicola Sturgeon)は自他共に認めるフェミニスト。スコットランド初の女性首相として男女同数の内閣を率い、公共団体理事会の男女同数化を推進するなど、ジェンダー平等推進に取り組んできました。
女性リーダーを戴くのは与党SNPだけではありません。野党第一党の労働党は2015年から、第二党の保守党は2011年から女性が党首。三大政党の党首に加えて議長も2011年以来女性と、スコットランド議会では女性の活躍が目立っていました。今回の選挙でも、スタージョン首相は政治のジェンダー平等を目指すWomen 50:50キャンペーンに賛同し、議員の男女同数化に取り組むことを広く呼びかけていました。
ところが、蓋を開けてみると、期待とはうらはらに女性議員の比率は35%という残念な結果。女性議員が非常に少ない日本から見ると、1/3以上が女性議員という数字は大きく見えますが、前回(2011年選挙)も女性比率が35%だったので、努力にもかかわらずまったく増えなかったということになります。スコットランド議会では1999年の初回選挙で女性比率が37%、2003年には40%に達した過去があるので、意識的に取り組んだにもかかわらずこんな数字になってしまったのは、逆に驚きでした。なぜこんなことになったのでしょうか。
与党SNPは、候補者の女性比率を40%台に引き上げて選挙に臨みました。50%にできなかったのは再選を狙う現職議員が男性多数だったためですが、新人が出馬する選挙区についてはすべて女性候補を立て、女性議員比率を前回の28%から43%へと、大きく引き上げることができました。
それでも全体として女性議員比率が上がらなかった最大の要因は、保守党の大躍進と労働党の不振でした。労働党は1990年代から女性議員数拡大に取り組んできた実績があり、前回の選挙でも議員の女性比率は46%に達していました。今回もこの比率を維持したのですが、議席を大きく減らして野党第二党に転落してしまったため、女性議員数も減ってしまったのです。一方、議席倍増を果たした保守党はクオータ制に反対しており、今回の選挙では唯一、候補者選びの際に男女比にまったく配慮しなかった政党でした。候補者の女性比率は19%と低く、比例代表リストでも筆頭はほとんどが男性候補。男性100%のリストで戦った選挙区すらありました。最も大きく躍進した政党の女性比率がこれだけ低ければ、当然全体の足を引っ張ってしまいます。
しかし、最も失望が大きかったのは緑の党でした。男女同数化に賛同し、比例代表リストで候補を男女交互に並べる「ジッパー制」を採用し、さらにリストの半数は女性を筆頭に立てて選挙に臨んだのですが、議席を大きく増やして野党第三党になったにもかかわらず、当選者6人のうち女性議員は1人だけ。女性を筆頭にしたリストで戦った選挙区のほとんどでは、議席獲得を果たせなかったのです。この緑の党の結果を見ると、クオータ制も機械的に導入するだけでは不十分であり、勝てる見込みの高い選挙区に女性を配置する戦略的なアプローチが必要であることがわかります。