昨日の記事の続きです。セッションで出てきた会場からの質問についてここでコメントしておきます。
Q: 音声入力を使うメリットがあるのか、導入が大変そうだが楽になるのか?
会場でもコメントしましたが、私の場合腕の痛みに不安があったことから、かなり早くから(最初に使ったのはドラゴンVer.3)音声入力に関心があり、時間がある時に少しずつ触ってみるようにしていました。その後急激にRSIの症状が悪化してキーボードやマウスを使える状態でなくなってしまった時、職場で音声入力を導入することによりフルタイムの勤務を続けることができました。これがなかったらその時点で翻訳者生命は絶たれていたと思います。スムーズに音声入力に移行できたのは、それ以前から試用していたためある程度使い方に慣れていたことが大きな理由です。
正直日本語音声入力を使うことでキーボード入力に比べて効率が向上するという事はないと思いますが、キーボード入力ができない状況では強力な助っ人になります。仕事をしていて腕の疲れや痛み、重症の肩・首の凝りに不安を感じているという人は、まだキーボードを使える今のうちに音声入力を導入することで、いざという時に救われるかもしれません。古い記事ですが、こちらの体験記も参考にしてください。
Q: 音声入力だと声を酷使することにならないか?
RSI対策として音声入力を導入したら喉を壊した、という話はけっこうあります。RSI症状が出ている人は身体全体が常に緊張状態にあることが多く、そのため音声入力を使うと喉を傷めやすいようです。
対策としては、
- 腹式呼吸で体の奥から発声するよう心掛ける(音楽や演劇でのボイストレーニングが有効)
- 常に手元に水やお茶を用意し、ちびちびと頻繁に飲んで喉を潤す習慣をつける。私の経験では、一日中音声入力を使っていた時は勤務時間に2リットルぐらいは軽く飲んでいました。
- キーボード入力と同様、音声入力の場合もこまめに休憩を取るようにする。上記に従って水を飲んでいるとトイレが近くなるので、これを利用してトイレに立ったついでに休憩を取り、ストレッチすると良いです。
Q: 情報収集や質問ができるようなユーザーコミュニティはあるのか?
英語ではSpeech Computing という大きなコミュニティがあり、私が音声入力を仕事に導入した時にはずいぶんお世話になりました。開発に関わった人が参加していたりして、質の高い情報が得られました。
また、Key Steps to High Speech Recognition Accuracyという文書は音声入力のバイブルとされていて、導入の際には必読です。RSI情報ドットコムにこの文書の日本語版「ドラゴンスピーチ音声入力ガイド」(未完成)を掲載しているので参考にしてください(※リンク切れ修正しました)。
日本語についてはやはりユーザー数が少ないため、コミュニティとして機能しているところはありません。以前「ViaVoiceメーリングリスト」というところに参加していたのですが、日本語音声入力で複数の選択肢があった時期でも、ほとんど利用者がいませんでした。もう消滅してしまっているようです。RSI情報ドットコムにも古い内容ですが音声入力関連情報を置いているので参照してください。質問も歓迎です。
セッションの感想・コメント
予想はしていたものの、「日本語音声入力は使えない」という方向になってしまったのは残念でした。ああいうデモをやると、たいていは会場の環境の問題もあったりして通常より認識率が下がりますし、日本語入力は文字変換というプロセスがあるため、英語と比較するとどうしてももたもたした印象になります(おバカな日本語IMEを使い始めた初期の入力効率を英語のキーボード入力と較べるの同じようなもので、、音声だからというだけの問題ではありません)。
実際に日本語入力を仕事に使ったことがあるユーザーという立場から言うと、認識率は使えば使うほど向上します。また、話しながら訳文を考えるというプロセスも、最初は難しくてもやっているうちにけっこう慣れるものです。私の場合、メール等の作成より翻訳の方が高い認識率を達成できました。むしろ翻訳というプロセスと相性の良い技術だと思っています。
導入時のハードルは高いけれど、それは例えば初めて手書きからキーボード入力に移行した時や、フリック入力を始めた時のイライラとそれほど違わないもので、使っているうちに慣れるし、効率も上がっていきます。キーボードを捨てて音声入力に乗り換えよう!というのではなくても、併用という形で導入することで腕や肩への負担を軽減できRSI予防につながりますし、症状が悪化した場合のバックアップとしても期待できるので、興味のある方、痛みや凝り等で不安のある方はぜひ試してほしいと思います。
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