我が家の脱炭素化プロジェクト:風力発電所のオーナーになる(かも?)

英国では住宅の8割以上がガスボイラーを使った集中暖房を使っています。大気汚染や中毒の原因となる石炭暖房から都市ガス(石炭・石油から生成したガス)、そして天然ガスへと切り替えを進める中でガス集中暖房が積極的に推奨された結果ですが、英国のCO2排出量を削減しネットゼロ目標を達成するためには、暖房の電化・再エネ化が必須になります。

英国は再エネ発電への転換を積極的に進めており、特にスコットランドでは90%を超える再エネ化をすでに実現していますが、気候条件からその主力は風力発電です。一方、家庭レベルでの再エネ切り替えというと、ほとんどの場合は屋根にソーラーパネルを設置するのが唯一の選択肢。太陽光より風力の方がずっと効率的とはわかっていても、さすがに住宅街で風力発電するのはちょっと無理ですよね。

…と思っていたら、Fully Charged Outsideのトークで意外なソリューションに出会いました。Ripple Energyという会社のサービスを通じて、風力発電所のオーナーになることができるというのです。

Own a wind farm with Ripple Energy

Ripple Energyは発電事業者でもなければ電力小売事業者でもありません。では何をする会社なのかというと、要するに風力発電協同組合の運営サービスを手掛ける会社なのです。風力発電所の建設と発電事業そのものは各風力発電所毎に組織される協同組合が行います。この協同組合に入った会員は、建設された発電所を共同所有するオーナーになります。Ripple Energyは、この協同組合の設立、会員募集、出資金の徴収、組合運営、発電所建設プロジェクト管理、小売事業者との契約取り扱い、会員アカウント管理などを行います。電力そのものは、Co-oP EnergyまたはOctopus Energyなどの提携小売事業者経由で供給を受けることになります。

Ripple Energyを通じて風力発電所の協同組合会員になるには、持分(シェア)の大きさに比例した出資金を支払います。シェアは最小25ポンド相当、最大限度は会員の住んでいる住宅の電力消費量の120%となっていて、それぞれの会員が事情に合わせて自由に決めることができます。会員は風力発電所の共同オーナー、つまり発電事業者ということになりますが、発電所が完成し稼働開始しても、そこから直接電力供給を受けるわけではありません。電力は電力網(ナショナルグリッド)に売電され、組合は発電所がグリッドから受ける発電収益の一部を、シェアの大きさに応じた電気料金割引という形で受け取ることになります。

発電所の共同所有というと、例えばスコットランド西部のエッグ島(Isle of Eigg)でコミュニティ所有施設による再エネ発電を行なっているケースなどがありますが、供給地域内に住んでいることが前提になるのが普通です。それに対し、Ripple Energyを利用する場合は電力は電力網に供給され、電力網から電気の供給を受けるので、発電所の近くに住んでいなくても、電力網につながっている家なら全国どこでも恩恵を受けることができます。

またRipple Energyを通じた風力発電所共同所有のメリットは、所有権が家ではなく個人に帰属すること。家の屋根にソーラーパネルを設置しても、引っ越したら家具と一緒にトラックに積んで次の家に持っていくというわけにはいきません。それに対し、風力発電所のシェアから得られる収益の恩恵は引越し先に適用することができます。また、集合住宅に住んでいてソーラーパネルを設置できない人でもシェアを所有することができます。

Ripple Energyが建設を手がけた風力発電所第1号は建設完了間近で、今年の冬に稼働開始するそう。その協同組合はすでに参加が締め切られていますが、現在第2号の会員募集が進行中です。第1号はウェールズにありますが、第2号はスコットランドに建設することになっていて、タービンも複数と規模が大きくなるそうです。現在はまだ予約受付段階なので、25ポンドの予約金を払うだけ。気が変わった場合は掛け捨てになってしまいますが、それほど大金でもないので早速加入してみました。出資金の額が発表されたら、どうするか決めようと思っています。

英国に住んでいて興味がある方は、こちらを参照してください。
https://rippleenergy.com/how-it-works

 

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