英国翻訳通訳協会のSlow Translation Manifesto

私が所属している業界団体 英国翻訳通訳協会(ITI: Institute of Translation and Interpreting)は、今年6月に「 Slow Translation Manifesto 」と題する声明文書を発表しました。誰でも手元のスマホで気軽に無料の機会翻訳ツールを利用できる時代においても、熟練翻訳者による人力翻訳は重要な役割を果たすと宣言する内容です。

Translation slamを視聴しました

“Translation slam”という言葉、聞いたことがありますか?翻訳者の対決バトルのことで、2人の翻訳者が同じ原文をイベント前に翻訳し、当日は2つの翻訳を並べて、それぞれの翻訳者がなぜこう訳したのかを説明する、という趣向です。数年前から耳にするようになった企画ですが、今回初めて視聴者として参加する機会がありました。

想像力について

翻訳者に必要な能力として、常々言っているのは
・ソース言語(和英翻訳なら日本語、英和翻訳なら英語)の読解能力
・ターゲット言語(和英翻訳なら英語、英和翻訳なら日本語)の文章作成能力
・扱い専門分野知識
・調査能力
で、これはもちろん全部必須だと思うわけですが、それに加えて
・想像力
というのがわりと大切なんじゃないかな?と思うことがあります。 […]

Love trumps hateについて

米大統領選の結果が出た日、日本での報道で字幕が問題になったようですね。とんでもない誤訳だとソーシャルメディアで叩かれ、あっという間にウェブサイトから削除されています。

Love trumps hate は単純なSVO文型で、Loveが主語、trumpsは三単現の動詞、hateが目的語。ソーシャルメディアでも散々指摘されている通り、普通に翻訳すれば「愛は憎悪に打ち勝つ」となります。ただし[…]

ヒラリーは「そうね」と言ったのか ― 翻訳と役割語の問題

良くも悪くも世界が注目するアメリカ大統領選挙。11月の本選挙が迫ってキャンペーンもたけなわの9月26日、第一回目の候補者ディベートが開催され、その様子は日本でも報道されたらしい。Twitterで「東洋経済オンライン」が発信したツイートが流れてきたのだが、そこにリンクされている記事を開いてびっくりした。

「この討論会が終わった頃には全て私のせいにされそうだわ」
「そうね、これまでと同じように訳のわからないことを言うといいわ」

ヒラリー・クリントン大統領候補が、いわゆる女ことばでディベートしているのである。